• ミチビク 株式会社

取締役会の運営実務【文例あり】

更新日:2021年8月26日

取締役会は、企業の戦略を決定する上で大きな役割を果たします。ですが、その運営方法については、基本的に外部に共有されることはなく、また会社法においても細かく具体的に規定されているわけではありません。そのため、なかなか情報を得るのが難しく、正解がわからないというのが現状です。本記事では、取締役会の開催・運営方法について、詳しく解説していきます。


 

取締役会とは

取締役会は、株式会社の業務執行の意思決定等を行う重要な会議体です。

取締役会の目的については考え方が様々ありますが、この記事では、企業価値向上のための意思決定(攻め)と企業価値を毀損しないようなリスクコントロールや不正防止など(守り)を目的として運営されるものとして扱うことにします。

取締役会での決定は、会社の方向性を決めるものになり、社内外に大きな影響をもたらすことになります。

はじめて取締役会を開催する場合、その影響をイメージすることは難しいかもしれませんが、取締役会の影響は大きく、しっかりと運営することが大事だという認識を持っていただければと思います。


なお、取締役会の重要性については、こちらの記事も参考にしてください。




取締役会に関わる会社法の定めや運営手順について詳しく見ていきましょう。


 

運営の手順

取締役会は「意義あるものにすること」がすごく重要で、そのためには議題設定が特に重要になってくるのですが、最初から満点で行うことは難易度が高いので、今回は「はじめて取締役会」を行う方を対象に、最低限の運営方法について実務手順を説明させていただきます。

まずは運営の型をつくり、その後どんどんブラッシュアップしていってください。


さて、一般的な取締役会開催の運営の流れは次の通りです。

  1. 出席者と開催頻度の確認

  2. 出席役員の日程調整

  3. 議題の収集

  4. 招集通知の作成・送付

  5. 当日の開催・決議

  6. 議事録の作成

  7. 議事録の回覧

  8. 議事録の署名

  9. 招集通知と議事録の保管


それぞれさらに詳しく見ていきましょう。



1.出席者と開催頻度の確認

【出席者】

取締役会の決議は、決議に参加できる取締役の過半数が出席し、出席した取締役の過半数により決議すると定められています(会社法369条1項)。また、監査役は、取締役会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない(会社法383条1項)とされています。

上記の通り、最低の定足数はありますが、取締役会を実効性のあるものにするには、基本的には取締役と監査役の全員参加を目標に調整するようにしましょう。

IPO審査でも取締役会への参加状況は見られるポイントになります。


【開催頻度】

取締役は、三箇月に一回以上、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければならない(会社法363条2項)とされており、最低3ヶ月に1回は取締役会の開催が求められます。これはあくまでも最低の開催回数であり、IPO審査では月1回の頻度で定時取締役会を開催し、月次業績報告や次のアクションを議論することが求められます。

定時取締役会については、月次決算締め→報告資料作成のスピードに合わせて、2週目や3週目の何曜日とするのがオススメです。

上記に加えて、緊急の事案については臨時取締役会を開催することで決議する場合もあります。


2.出席役員の日程調整

参加が求められる役員は忙しい人が多いです。そのため、6ヶ月~12ヶ月分の日程を先に押さえるようにしましょう。

前述しましたが、基本的には取締役と監査役の全員参加を目標に調整しようと思うと、先んじて先回りして日程を押さえる必要があります。

東証の有価証券上場規程というものでも「年間の取締役会開催スケジュールや予想される審議事項について決定しておくこと」と定められています(原則4-12(ⅲ))。


3.議題の収集

取締役会に上げる議題を社内から収集します。

なお、取締役会の決議事項として会社法で定められたものがあり、こちらについては必ず取締役会で決議しなければなりません。


■会社法362条4項に定められているもの

  • 重要な財産の処分及び譲り受け

  • 多額の借財

  • 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任

  • 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止

  • 募集社債の金額その他の社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項

  • 取締役の職務執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なものとして、法務省令で定める体制の整備(大会社である取締役会設置会社では、法定義務)

  • 定款の定めに基づく取締役、会計参与、監査役、執行役または会計監査人の会社に対する責任の免除の決定

■会社法362条以外に定められている主な取締役会決議事項

  • 自己株式の取得株数、価格等の決定(会社法157条)

  • 株式分割(会社法183条2項)

  • 株式無償割当てに関する事項の決定(ただし、定款に別段の定めがある場合は、この限りでない)(会社法186条)

  • 公開会社における新株発行の募集事項の決定(会社法201、202条)

  • 一に満たない端数の株式の買取りに関する事項(会社法234条5項)

  • 公開会社における新株予約権の募集事項の決定(会社法238、240、241条)

  • 株主総会の招集の決定(会社法298条4項)

  • 取締役による競業取引および利益相反取引の承認(会社法356、365条1項)

  • 計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書の承認(会社法436条3項)

月次業績報告や多額の投資の決定は頻度高く議題に上がるものだと思います。その他にも、役員の選任、本社移転、事業計画の承認、デット・エクイティ調達の決定、規程の改廃、計算書類の承認、株主総会の招集決定などが比較的議題に上がりやすいもので、これらは会社法や社内規定で必ず取締役での決議が求められます。

まずはこれらについて、社内から情報収集できるように体制を構築しましょう。



3.招集通知の作成・送付

議題を集め、原則として、取締役会の開催日の1週間前までに招集通知を発信する必要があります(会社法368条1項)。ここで注意なのが「取締役会の開催日の1週間前まで」というのは、中7日あけるという意味です。15日が開催日の場合は、招集通知送付期限は7日となります。8日ではありません。

実務上は定款の定めにより、「会日の3日前まで」に招集通知を発するものとし、「緊急の必要があるときは、この期間を短縮することができる。」とする例が多く、筆者の経験からもこちらがオススメです。


招集権限者(取締役会を招集する権限を持った者)についても定款に定めを置くことができます。多くの会社で代表取締役が設定されています。定款で定められていない場合には各取締役が招集することとなっています(会社法366条1項)が実務上は代表取締役が招集することが多いです。


通知の方法について会社法に特段の定めはなく、口頭・電話・書面・メール等、どんな方法でも良いとされています。しかし、客観性を担保するためやり取りの履歴が残るもので行いましょう。michibikuを利用するか、そうでない場合はメールでやり取りするのが簡単だと思います。





招集通知のイメージはこのような形になります↓

月次業績報告や投資計画の承認など、補足資料が必要なものについては招集通知と一緒に送れると良いですが、準備が難しい場合は開催日の前々日までぐらいには送付し、当日の決議がスムーズに行くようにしましょう。



4.当日の開催・決議

開催日時として決められた日時で、取締役会を開催しましょう。今では、オンライン開催も当たり前になってきており、出席者はどこから参加しても問題ありません。しかし、出席者がどこから参加しているか?出席者と意思疎通が図れる状態か?は確認し、議事録に残す必要がありますのでご注意ください。


議長の進行により、設定した議題について議論し、議論の要旨を議事録にできるようにしておきましょう。

取締役会の議長は、通常は定款で「代表取締役がつとめる」となっております。定款に定めがないときは取締役会ごとに決められます。定款の定めを確認してみてください。



5.議事録の作成

取締役会で議論した内容を議事録に残さなければなりません(会社法369条3項)。

その際、議事録には取締役会の開催日時及び開催場所、全取締役の人数と実際に出席した取締役及び監査役の氏名等を記載する必要があります。

取締役会での議論がどのように展開したのかを記録し、最終的にどの議題に対して、誰が議決に賛成で、誰が反対であったのかを記録します。こうした記録は、決議の有効性だけでなく、なにかあったときの賠償責任などにも関わる重要なものとなります。


必ず記載しなければいけない事項は他にもありますが、発生頻度があまり高くないと想定されるので、詳しくは会社法施行規則101条3項をご覧ください。


相次ぐコーポレートガバナンス起因の不祥事や国際的な潮流により、IPO審査において従来より重く見られるようになってきています。適切に作成できるようにしましょう。


議事録のイメージはこのような形になります↓





6.議事録の回覧

議事録を作成したら、内容に間違いがないか出席者に回覧に出しましょう。

このときも紙での回覧より、電子でのやりとりの方が圧倒的にコストを削減できます。


定款の定めで「記名・押印」というような形になっている場合、電子対応が不可になってしまいますので、定款を確認し電子対応が可能となるように変更しましょう。


定款を変更する際の文案は次の通りです。

取締役会における議事の経過の要領及びその結果並びにその他法令に定める事項は、議事録に記載または記録し、出席した取締役及び監査役がこれに署名若しくは記名押印又は電子署名をする。



7.議事録の署名

内容の回覧・確認が完了したら次は署名です。

署名について従来は紙での署名・押印が当たり前でしたが、法改正もあり現在では取締役会の署名についても電子署名が認められています(議事録で電子署名を使う際は前述の通り、定款で電子署名の定めが必要)。

内容確認の回覧から始まり、署名までを電子上で完結できる方が早く、かつ情報セキュリティ観点でも安全性が高いです。


電子署名のツールはmichibikuをはじめ、クラウドサインやGMOサインなどがあります。



8.招集通知と議事録の保管

取締役会議事録は、取締役会の日を起算日として10年間、本店に備え置くことが義務づけられています(会社法371条1項)。

取締役会議事録だけでなく、招集通知もセットで保管するようにしましょう。


保管についても紙で行うとなると、毎回のファイリングの工数、確認する際の検索コスト、保管場所の問題など、無駄が発生することになりますので一元管理できる設計にするようにしたいところです。


 

取締役会の記録は電子で残しましょう

上記でも記載しましたが、招集通知や議事録のやり取り、保管に関しては電子上で行うことを推奨します。

筆者はいろいろな会社の監査をしてきましたが、紙で運用している場合、どんなにしっかりしている会社でも、署名のための郵送コスト・時間的コスト、ファイリングの工数、確認する際の検索コスト、保管場所の問題など無駄が発生しています。スタートアップとなると、昔の議事録が紛失するということもザラにあります。このような事態を避けるためにも電子上でやりとりできるツールや体制構築が必要となります。


 

取締役会をブラッシュアップしていきましょう

運営ができるようになってきたら、形式的な決議はなるべく早く済ませられるようにし、本来議論すべきことをしっかりと議論する体制を構築していきましょう。

そのためには、形式的な決議に関する情報共有とスムーズな決議ができるようになることが重要です。michibikuを使えば、形式的な決議はスムーズに行うことができます。


それができるようになったら次は議論すべきアジェンダ設定について考えてみましょう。

アジェンダ設定についてはまたの機会に書きたいと思います。


最後までお読みいただきありがとうございました。




閲覧数:896回0件のコメント